Moon Duo - Shadow Of The Sun

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好き好きムーン・デュオの最新アルバム “シャドウ・オブ・ザ・サン”

ヨーロッパ・ツアーでのサポートドラマーであったジョン・ジェフリーの正式加入により、
もはやデュオと呼べるのか?という素朴な疑問はさておき
(しかしMoon Trioなんてダサ過ぎる)
ライナーにある様な「野放図に揺らぐリズム」を得た事が
今作においての非常に重要な要素
との向きには、僕は疑問を呈したい。




まず一つに

そのチープな連続性を背景に、満たすようにしてドローンを鳴らし
弛緩したサイケデリアの中 蜃気楼のように
ディレイによって波紋を空間に投げかけるワウのソロが (毎度 金太郎飴みたいに) 現れる、
その際の異物感が 不愉快にも心地良い

と言うのが彼らのセオリーであり、アイデンティティーであるように思えるからだ。


リズムに幅を持つ事は、意識の停滞を阻害し
アクティブな瞬間へのリアクションを薄れさせてしまう。




二つ目はドラマーの加入によって、
上記の様なデメリットがこのアルバムには 実際ほぼ感じられない
と言う逆説でもあるのだけれど、
そのリズムはマシンでの打ち込みと大きくは変わらないと言う点。


手間は増えるかも知れませんが、
プログラミング次第でいくらでも得られそうなミニマルさ。
(そんな事を言ったらほとんど全ての事に人力なんて要らないのだけれど)

彼はあくまでこれまでのムーン・デュオの一部に徹している様に思えるのですが…




ここまで書いてしまうとあたかも、
僕が新メンバー John Jeffreyの存在を どんなリズムを刻んでいるとしても疎んじているかの様ですが
タイトで精密なドラミングはむしろ好みだし
何より、
リズムマシンのミニマルで執拗なシークェンスから解放し、
イントロとアウトロに変化をもたらし
もしかするとその存在が 2人だけと言う閉じた空間に拡がりをもたせたかも知れない。

と言う所に彼の重要さはある様に感じます。




“Wilding” “Ice” の様な
これぞと言うような ジリジリと侵食するドローンを展開しつつ一方で

“Zero” に聴こえる、凍てついたサイケデリック・ダンスチューンは
これまでに無い 意識を隔離する様な高揚感を与えるし

“In A Cloud” のメロウな
(しかしどこか不穏な。どっしりと黒雲の残る夕焼けの思い浮かぶ)
スロウナンバーも新鮮です。

“Thieves”は恒星の回転を早回しで見ているような
スケール感と繰り返しが堪らない。

“Animal” のSFじみたサイケパンクでは
彼らの知らない側面を垣間見ることもでき…




と、
ガラリと変わりはしないものの
同じ波形ながらその山が大きく、谷が深くなった印象。


これは多分
3人目のムーン・デュオを迎えてこその変化だと思う。

正直、これまでの どのアルバムより好きな1枚。




変わらぬスタイルはより自由度を増し、
留まる事を知らず新たな可能性へ。


再び来日の機会がある事を
心待ちにせずにはいられませんなコリャ。




しかし前作といい ジャケットが好みだなー。

バンド名のフォントを除けば かなりツボです。




そして妹に子供が生まれて異様にハイになっております。


Moon Duo - Animals

by tspacemen | 2015-07-24 02:46 | music | Comments(0)

雑記

by 鈴木 健郎