唯一無二とはよく言ったもの

早くもヤフオクに並ぶスタンスミスに胃の煮え繰り返る思いをしつつ
その怒りを音楽収集へと向けました。




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Debris' - Static Disposal

パンク前夜の1970年代前〜中期は
ハードロックやプログレッシブに隠れるようにして
どこにも属さない(属せない)DIY精神あふれるフリーキーなバンドが
日の目を浴びること無く活動していた時期でもあります。

このアルバム一枚を残し姿を消したデブリスもまたその一つ。


ギター、ベース、ドラムスの3ピースを基本形としたバンド編成ながら、
元々のスタイルであったであろうプロト・サイコ・パンクに ふんだんにエコーマシンや発信音が盛り込まれ
パンクと言うには奇妙過ぎ、
サイケと呼ぶには性急で暴力的過ぎる
狂気に溢れブッ飛んだ仕上がりになってしまっています。


その電子音はスーサイドの感電するようなサウンドでは無く
遡ってシルヴァー・アップルズやユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカに聴けるような
ちょっとモンドな雰囲気。

全体的にストゥージズのカオス、
そして僅かに初期フロイドのコズミックさも伺えます。

ニューウェーヴを迎えるまで
我慢比べのように他の音楽との交流を絶っていたサイケデリック・ロックが触れた、
数少ないパンクの一つでは無いでしょうか?


こんな奇天烈なバンドがパティ・スミスやラモーンズでも有名なCBGBでプレイしていたと言うのですから
見に来た観客の気持ちはお察し。唖然としていたことでしょう。
百戦錬磨のパンクスだって 何じゃこりゃ、です。




有名なサイケレコード本にその名を掲載される通り
パンクとしてより、サイケの派生系としての方が楽しめるバンドだと僕は思います。


サイケデリック・ミュージックとは聴き手の内世界の扉を開ける“手助け”となるべく
自身の感情の押し出しがソフト、
あるいは無感情で殺伐とした物が大抵のように思うので、
(僕は英語がわからないので余計にそう感じるのかも知れません)
デブリスのような、怒りに任せたようなパターンは珍しい。

毛色は全く違いますが、
初期テレスコープスの、バイオレンスに溢れたガレージサイケを始めて聞いた時と同じ様な感覚。

(余談ですが彼らがシューゲイザーと言うのはどうにも腑に落ちない。
クリエイションに一時期在籍していたノイジーなロックだからでしょう?)




雑多な音楽性を半ば無理矢理に同居させた様なバンドですので なかなか人にお勧めし辛い物がありますが
ギターリフの格好良さ、エレクトロニクスのフリーキーさ
そしてカオティックなサックスに怒号のようなボーカル と、聞き所は満載ですので、
オリジナルに特化していないサイケファン、
スタッズの付いたライダースが家に無いパンクス、
そして何故か他人に共感されないオルタナばかりが好きと言う方にはイケるかも、あるいは。
(総合して、まさに僕です)




宇宙ゴミ(Space Debris)さながら、
今や見放された様な存在であっても
永遠に失われない運動エネルギーによってうっかり近づいたものを圧倒する。


このアルバムは暗黒に置き去りにするには危険極まりない一枚であるし、勿体無い価値があると思います。


世の中にはゴミに魅力を感じる人もいるのです。


Debris' - One Way Spit



そして国内流通盤の帯の長さもまたー


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何て暴力的なんだ。
by tspacemen | 2014-02-12 22:05 | music | Comments(0)

雑記

by 鈴木 健郎