ペルと呼ばれた犬がこの世にいた事について

あるブログで 失踪してしまった猫の記事を読んで
思わず涙ぐむとともに
かつて飼っていた犬の事を思い出しました。


ペル、と言う。




雑種のその犬は僕が6歳の冬に我が家にやってきました。


僕にとって待望の、そして家族にとって初めての動物。
差し出した手をペロペロいつまでも舐めている事から転じて、ペル。




決して利口な犬ではありませんでした。

メス犬を見るや否や どこから湧いてくるのかその凄い力に引き摺られたり
誰が通りかかっても吠えてはしゃいだり。
雑草をうまいうまいと食べていたかと思えば泡を吹いて倒れていたりも。

そうそう
小学生の頃、授業中 窓際のクラスメイト達が騒ぎ出し
何だろうと思って校庭を見てみると
杭を引き抜いて来たのか、鎖をジャラジャラ言わせながら駆けずり回るその姿が。

「あれ、T君家の犬じゃない?」

と言われた時など、
顔から火が出るかと思った。




けれど家に一人でいることの多かった僕にとって彼は
紛れも無くかけがえの無い親友でした。


親を待つ間 庭で草をむしって遊んでいると
(小さいうちはよく分からない事が面白かったりする。
草をむしったり、裂いたりね)
もちろん僕の犬も普段から話したりはしなかったけれど
黙ってずっとそばにいてくれたり、
散歩に出かければ 姿が見えなくても呼べば必ず飛んで来た。
学校から帰れば、いつかちぎれるか あるいは少し浮くのでは無いかと思えるくらい
尻尾を振って喜んだ。

家族の中でも
僕には特に懐いてくれていたように思います。




そんなペル、
僕が高校3年生の夏の終わりに死んでしまった。


前夜、もう立てなくなって浅い息をしている彼のそばを離れたくなかった。

翌日は始業式だった事もあり、明け方床に就いたが
翌朝起きてみると死んでしまったことを知らされた。

「みんなが眠るまで起きていてくれたんだね」
と言った母の言葉に 子供のように号泣した。

梅の木の側に掘られた穴に横たわる彼に
どうでもいい土なんか かけたく無かった。




親戚は皆県外、
また祖父母と一緒に住んでもおらず
それぞれ年に一度会えるかどうか。
友人達はありがたいことにみな元気である僕にとって
それは今に至るまで唯一の 近しい、大切な存在の死でした。




その後庭は駐車場にする事となり
そこで親と大揉めになるのですが、
結局、彼は今ではコンクリートの下で眠っている。




そしてただの偶然だろうけれど、
彼の命日は僕が長年の夢であったアパレルへの就職が決まり、
初出勤した日でもある。

僕は彼が力添えをしてくれたのだと、この歳でも本気で思っている。




ペルと呼ばれた犬がこの世にいた事について_a0275477_2282563.jpg

実家では今、猫を飼っていて
帰省した時などそれはもう可愛がっています。
叶うのなら東京でも猫を飼いたいくらい。


でも犬をまた飼いたい、とは思わない。
全然。








僕にとってはまだ、
ペルだけが唯一の犬の家族であり
代わりのきく存在では無いのだと思う。
Commented by ひよこ at 2014-03-13 10:16 x
ベルさんは、Tさんの守護犬神さまになったのですね。
これからもずっとあたたかく見守ってくれるでしょう。
よい話をありがとうございました。

ところで、うちにはにゃんこがいます。
この肉球とふこふこで生きています。
にゃんこさんとの同居生活、おすすめします。

実家のにゃんこさん、美猫ですね〜。
あのお腹に顔を埋めてみたい。
Commented by tspacemen at 2014-03-16 01:45
ひよこさん

コメントお返し遅くなってすみません!

アレコレ世話を焼いた割にあんまり守護されてる感が無いのが悲しい所ですが
愛すべき駄犬であった彼らしいと言えば彼らしいかも知れませんね。笑

ひよこさんのお宅にも猫さんがいらっしゃりますか!
肉球、良いですねえー(鼻息)

実家のは非常に無愛想で
滅多なことではキュートな表情なんてしてくれません。
肉球も触らせてくれません。
腹のモフ毛に顔を埋めてみた日には蔑むような目で見られます…
更に、いい年しておしゃぶりが大好きなオッサン猫です。
しかしメロメロなんですよね〜。

住宅事情的にも飼う事は難しいので、
外で見かけた時はあの手この手で遊んでもらおうと必死になってます。
はたから見たらちょっと気持ち悪いかも…

猫さん可愛がってあげてくださいね!
by tspacemen | 2014-03-09 02:27 | days | Comments(2)

雑記

by 鈴木 健郎